経営学者である、C.I.バーナードによると組織は、①明確な目的を持っている、②構成員の意思疎通が図れる、③構成員の貢献意欲を持っているこの3つの条件が揃って組織と定義しています。
さらに、組織は共同体と機能体に分けることができます。
共同体とは、家族、NPO法人、ボランティア団体など当てはまり、機能体では、軍隊、企業、官公庁などが当てはまります。下図をごらんください。共同体と機能体では、根本的に組織の目的や理想の状態が異なっています。
共同体では、構成員の居心地の良さを目的としているのに対して、機能体では、企業は利潤の追求、軍隊では防衛、官公庁では行政など外的な目的を主としています。
戦国時代初期、多くの地域では、農民を主体とする軍隊となっていました。しかし農民を主体とする組織では、畑を耕したり、作物を収穫する時期に戦場に行くことができず、機動性に問題がありました。
また地域の有力者(豪族)などが支配する組織では、合議制で意思決定が遅く、血筋などにより明確に身分が分かれていました。
織田信長は、兵農分離により、お金を出して専業の兵士を雇うことで、いつでもどこでも、軍隊を機動的に動かすことができました。
また身分によらず、客観的な能力評価により、豊臣秀吉や明智光秀など才能のある人物を積極的に登用しました。更に、彼らに権限委譲することで、様々な地域で戦争をすることができるようになります。
信長が、共同体としての組織を機能体として最大限活用したことで、短期間で他の地域を征服することができました。
日本は明治維新後、富国強兵により、欧州の優れた軍事制度を取り入れます。その結果、わずか30年足らずで、アジア随一の軍事大国として成長。日清・日露戦争に勝利します。
優れた将校を養成する、陸軍士官学校と海軍兵学校創設し、大量の軍人エリートを輩出し、職業軍人が増えていくことになります。
職業軍人の欠点は、軍人以外に食べていく道がないことです。そうすると、組織の目的よりも、自身の保身に走ってしまう傾向になります。
また当時は、都市と農村などの地方で経済的な格差が激しく、東京帝国大学など入学したくても学費が払えない優秀な人材が、学費や生活費が無料になる、陸軍士官学校や海軍兵学校に入学したのも、偏ったエリート意識を植え付けた要因となります。
組織が徐々に拡大していくにつれ、皇道派と統制派の対立など組織内部での対立が激しくなります。また太平洋戦争に突入すると、陸軍と海軍の対立も発生します。
組織内部ではハンモックナンバー(卒業時の成績)による主要ポストの独占、不公平な人材配置、過去の成功体験への固執により徐々に組織が、外よりも内に向かい始めます。
その結果、日本は多大な犠牲を払う形で敗戦し、帝国陸海軍は壊滅します。
昨今、元横綱の暴行問題でメディアを騒がしている、日本相撲協会は公益法人です。
組織を運営する幹部のほとんどが、元力士であり、相撲に関わること以外、食べていける道がない人たちでもあります。(もちろん飲食店を経営されたり例外もありますが)
上記の帝国陸海軍と同じように、元力士で構成される組織では、共同体化しやすく、隠蔽など様々な問題が起きやすい体質と言えるでしょう。
また日本相撲協会に関わらず、NPO法人やボランティア団体の多くが、メンバー間の問題で崩壊しやすいのは、本来の目的達成よりも、メンバー間の居心地の良さを重視するあまり、不公平さや不満が発生しやすいためです。
企業のような機能体組織でもその大きさに関わらず、共同体化してしまう性質を持っています。
もちろん、行き過ぎた機能体組織では、メンバー間の競争関係の激化や強い緊張感が発生するため、良い面ばかりではありません。
共同体の性質とその問題を防ぐことで、健全な組織を構築できると考えています