インタビュアー&ライター 森田 晃
プロジェクトベースでの様々な企業とコラボレーションするパラレルワーカー。
営業やマーケティングや人事制度設計や社外メンターや取材など様々な活動に従事。
ベンチャー企業が成長する上で、必ずと言っても良いほど、人や組織の問題に直面します。
今回は、マネーの虎で一世を風靡した高橋がなり社長の右腕として、社員数名から、数百名規模まで人事責任者として携わってきた、株式会社ハタラク代表取締役 天谷様に、ベンチャー企業において人事評価制度を機能させるための秘訣を伺ってきました。
私が、ソフト・オン・デマンド株式会社に入社したきっかけは、創業当初、フランチャイズの店舗開発でお世話になっていた先輩から、営業を手伝って欲しいということで社員6人の時代に入社しました。
私自身も会社の立ち上げに携わってみたいという想いもあり入社を決意しました。そこから、4億円の売上が翌年に8億円へ、そして3年目には16億円。さらに4年目には、30億円と一年ごとに売上が倍々で増えていったのを覚えています。
創業5年目あたりから新卒採用を始め、創業10年目には、社員が100人、売上が100億円目前というタイミングで、人事部を立ち上げ直すことになりました。外部の専門コンサルタントにサポートいただき、人事部を一から作り直す形となりました。
私が担当する前の人事部では、人事評価を作成、運営していたのですがあまり機能していませんでした。管理職のメンバーが人事職価に関する人事部の要望や依頼に対して、忙しくて対応できないのが主な理由だったと思います。
現場は毎日の業務に追われ、部下の評価にゆっくり時間をかけることができないですし、そもそも評価についてよく分からない、それでも社員はどんどん増えていく、人事部は作ったものの、現場との意思疎通が図れず機能していない状態でした。そんな中、創業メンバーであった私が人事の責任者として抜擢されました。
社内で機能していない人事評価制度を再度作成することを、社長から指示され、人事未経験の中、新卒採用、中途採用、労務管理を同時に行いながら、人事評価制度の再構築を行いました。
私には、人事評価の設計に関する知識も経験もなかったので、外部のコンサルタントに依頼し、1年くらいかけて設計してもらいました。
しかし、運用段階のフェーズでつまづきました。なぜなら、評価項目が多くて現場で活用できなかったからです。
上場企業でも通用するくらいしっかりとした制度を作ったにも関わらず、このまま捨てるのももったいないという事で現場で使えるレベルまで項目数削ぎ落として、運用を始めました。 またベンチャーなので色々な変化が多いため、評価制度を随時見直しながら、運用することでうまく機能することができました。
会社が圧倒的スピードで成長してたので毎年、数十名規模で社員を採用していましたが、残念ながら辞めてしまう人も多かったですね。
当時は、教育や研修も、座学ではなくほとんど現場でのOJTで対応してもらい、合わない人は辞めて行くという状況でした。
このままではヤバいと感じ、離職率を減らすために、新入社員に対して、しっかりと時間をかけて新入社員研修をするように力を入れました。また、仕事面や精神面でフォローする人が必要ということで、メンター制度を実施しました。
社員の数が100人を超えてくると、現場の声が拾えなくなってきます。そこで喫煙所の非公式的なコミニケーションに着目しました。
社員同士の喫煙所での会話は結構重要で、誰が活躍しているのか、新しく入った社員は組織に馴染んでいるのか、など部下や他の社員から情報を聞き、現場のリアルな声を耳にするようにしました。
そのような非公式的な情報も含めながら、フォローすべき社員を見極めたり、能力が高く、早めに成長させたい社員に関しては社長付で1年間社長室で業務を行なう取り組みも行いました。
色々な施策を行った結果、1年程度で離職率を3割から半分に減らすことに成功しました。
組織的な観点から申し上げますと、マネジメントが機能していない会社は多いと思います。特にベンチャーの場合は、プレイヤー層とマネジメント層の、仕事の役割や、やるべきことの違いが分からないまま、事業が成長してしまうケースがあります。
このような会社は、20代、30代など若い年齢層で構成されていることが多く、プレイヤーだった人が全くマネジメント経験が無いまま、いきなり部長として部下を含めたマネジメントに携わらなければならない状況があります。
その場合は、マネージャーの役割を明確にし、ある程度の知識を持ってもらうだけでも効果があります。実はセンスがある人はそれだけでも、マネジメント職が務まったりします。学生時代に、部活やクラスでリーダー的なポジションを経験した人は特にうまく行きますね。
また組織が拡大する上で、人事評価は重要で、特にミッション、ビジョン、バリューに基づいた評価を作ることは必須だと思っています。
ベンチャー企業をご支援させていただく中で人事評価制度を厳密に作りたくないという企業さんも、確かにいらっしゃいます。
そんな時は、会社として絶対に辞められたくない人間が辞めていく状況をイメージしてもらいます。人事評価制度は辞めて欲しく無い社員がしっかりと評価されるシステムであることを伝えています。
人事評価を作る際は、活躍している社員がどんな仕事をしているのか紐解いていき、こんな社員になってほしいというコアバリューを作っていっています。
また、会社のビジョン・ミッション・コアバリューに基づいた評価も加味することで、自社にふさわしい社員を育てたり、採用での判断軸にもなり、結果的にミスマッチを減らし、定着率も向上できます。
非常に重要ですね。何故ならば、これが無いと社員の目線がバラバラで方向性を失い組織のマネジメントもうまく行かないからです。
創業当初からビジョン・ミッション・コアバリューは必要ないかもしれませんが 事業が拡大して、組織が大きくなるタイミングでしっかりと定めるべきです。また、それを社内外に公表するべきだと思います。組織内で浸透させ、社員の行動まで落としこむことが必要です。
私は基本的に反対です。何故ならば、会社として成熟していないと、運用が非常に難しいからです。人事評価を導入する際に、管理職に対して社員の評価に対する評価者研修をやるのですが、それでも評価の基準がバラバラになることが多い。
これが、管理者以外の社員に対しても、評価をすることになると、公平な評価ができないことが多いですね。
結果的に部下に好かれようとする管理職が出てきて、部下に対して甘くなるのが問題です。
360度評価に関しては、運用が難しいのを前提に、ミッション・ビジョン・コアバリューが社員に浸透しており、ある程度会社が成熟していることが導入の条件だと思います。
またいきなり360度評価を導入するのではなく、参考程度に社員からの評価を吸い上げながら、徐々に自社に合致するのか見極めながら導入していくことを勧めています。
社名 | 株式会社ハタラク |
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事業内容 | 人事コンサルティング事業 ベンチャー企業への成長支援 |
URL | http://hataraku.tokyo |
略歴 | ソフト・オン・デマンド株式会社にて、立ち上げメンバーとして参加。キャリアは、営業からスタートし、総務人事部の責任者として約8年勤務し、総務人事担当兼執行役員を務める。2015年に独立。 実質、人事スタッフがゼロの状態から、グループ全般の人事対応まで担当。 |