現在、採用時の選考の中で、候補者のストレス耐性を調べる適性検査は多く存在します。
しかし適性検査を実施し、ストレス耐性が高い社員を採用したが、メンタル問題で休職・離職してしまったなどの声をよく耳にします。
そこで、今回は適性検査は本当にメンタルリスクを予測できるのか、またストレス耐性が低い人はパフォーマンスも低いのか考えてみます。
厚生労働省によると、日本では、うつ病を含む気分障害の患者数は約112万人(2014年調査)存在し、医療機関での受診をしていない潜在的なうつ病患者を含めると500万人存在していると言われています。
今や、うつ病などの精神疾患は大きな社会問題となっています。
うつ病は脳内の神経物質の一つである「セロトニン」と深く関係しています。
セロトニンは快楽や喜びの感情を司る「ドパミン」、怒りや不安の感情を司る「ノルアドレナリン」を制御して精神を安定させる働きがあります。
このセロトニンを運搬する遺伝子が存在し、セロトニントランスポーター遺伝子と呼ばれています。トランスポーター遺伝子には伝達能力が高いL型と伝達能力が低いS型があり、その組み合わせでLL型、SL型、SS型の3つが存在しています。
以下の表をご覧ください。日本人は、65%がSS型でLL型は2%と世界で最も少ない部類に入っています。
ちなみに米国人はSS型が2割、SL型が5割、LL型が3割と日本人に比べて、LL型の割合が多い結果となっています。
つまり日本人にはセロトニンを伝達する能力が遺伝的に低く、ストレス耐性の有無に関わらず、誰しもメンタル疾患にかかるリスクがあると言えます。
弊社が提供する適性検査INOBERでは情緒安定性という項目でストレスの感じやすさや、気分の落ち込みやすを計ることができます。
また、うつ病になりやすい人は、生真面目で完璧主義、責任感が高い傾向があり、こちらも、INOBERの良識性(誠実性)で計ることができます。
しかし、その候補者が将来うつ病のようなメンタルリスクがあるかどうかまでは予測できません。
理由は、適性検査はあくまで本人の内面にフォーカスしているため、ストレスを感じやすい、責任感が強いなどの傾向は把握できますが、入社後の環境による影響まではわからないため、予測することは難しいためです。
環境による影響とは、入社後の実際の仕事量、勤務時間、人間関係、プライベートの出来事(両親の死別や、離婚、借金など)のことです。
過去、社内でメンタル問題で休職したり、離職してしまった社員がいる場合、本人の問題ではなく、労働環境や仕事内容、ストレッサーの存在など本質的な原因が隠れている可能性があります。そのためメンタル問題での休職・離職を本人だけの責任にするのは危険です。
INOBERを利用いただいたある人材系の企業にて性格特性とパフォーマンスの関係を調べたところ、営業成績で数回MVPを獲るトップパフォーマーは内向的で神経質(情緒安定性が低い)な傾向であることがわかりました。
一般的に、営業職は誰とでも臆せず話せる外向性や、高いプレッシャーに耐えれる情緒安定性が高い人が良いとされますが、全く異なる結果となりました。
更に詳しく調べていると、そのトップパフォーマーは神経質であるため、顧客の気持ちを察知する能力に優れ、フォローが得意であることが分かりました。また内向的であるため、傾聴力が高く、顧客のニーズをうまく理解し深く信頼されるていることも分かりました。
一方、情緒安定性が極端に高い人は、無謀な行動を取りやすく、危機に鈍感で、顧客のクレームへの対処が苦手であることが分かりました。
つまり、ストレス耐性が高いからと言って、仕事ができるわけではないのです。もちろん職種にもよりますが、選考の段階で、ストレス耐性が低い人を候補にあげないのは、隠れたハイパフォーマーを見落とす可能性があります。
ストレス耐性の有無で候補者を採用するのではなく、まずは、ストレス耐性とパフォーマンスや定着率に関係があるのか調べることをおすすめします。
また同時に、社内においても、従業員のストレスを与える要因(労働時間、過度なノルマ、コミュニケーションの強さ、ストレッサーの存在などを把握することも必要です。
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