大企業でも、ベンチャー企業でもテクノロジーの変化や顧客ニーズの変化、市場の変化に追いつけず衰退してしまう企業は多くあります。
衰退する理由は、時代の変化に合わせて、市場に受け入れられる商品やサービスを提供できなかったからです。
一方、世の中には、時代の変化に合わせて、常に画期的なサービスを生み出し継続的に成長している企業もあります。
このように衰退する企業と画期的なサービスを生み出すイノベーティブな企業は何が違うのでしょうか。
一つあげられることはイノベーティブな企業とそうでない企業において「人と組織の関わり方」が大きく異なるところです。
世界各国で事業を展開している人事組織系コンサルティング会社、ヘイコンサルティンググループの研究結果によると、イノベーション企業には共通する特徴があり、以下の6つであることがわかりました。
① 明確なビジョンと視座
② 人材の多様性
③ 上下間の風通しの良さ
④ ネットワーク密度の高さ
⑤ 失敗に寛容な文化
⑥ 組織における遊びの存在
イノベーティブな組織に共通する特徴として、明確なビジョンやミッションを掲げていることがあげられます。 「自分たちは何を目指すのか」、「どういう存在なのか」を明文化し、社内の隅々まで浸透させています。
一方、イノベーティブでない組織では、ビジョンやミッションよりも、短期的な売上や上場目標など、目先の利益に目線が行ってしまい、中長期のビジョンを掲げていないところがほとんどです。
またビジョンやミッションあったとしても、ほとんどが組織内で形骸化し、広く社員に浸透していません。組織形態としても、指示命令型が多く、権力が明確に区切られています。
明確なビジョンと視座に関しては、リーダーである経営トップの役割が非常に重要になります。
人材の多様性に関しては、表面的な多様性と内面的な多様性があります。
表面的な多様性は、性別、年齢、人種などの多様性です。
一方、内面的な多様性は「価値観」、「専門性」、「スキル」のことです。表面的な多様性よりも内面的な多様性を持っている組織ほど創造性が高いことが言われています。
平均年収2600万円で有名な動画サービスのNetflixでは、社員同士自由に言いたいことを言い合える独自のカルチャーを持っています。
Netflixでは、上司は部下に対して、率直なフィードバックを伝えること、社員は上司や経営陣に対して、自分の意見、不満などを実名で伝えることを推奨しています。これにより、経営の透明性や自由な雰囲気を作ることに成功しました。
上下間の風通しが良くないと、社内政治の蔓延や人間関係の悪化に繋がります。また、商品開発や顧客の満足度をあげることよりも、社内調整などで多くの時間や労力を費やしてしまいます。
上下間の風通しの良さは、組織内での権力格差の度合いと関連があり、最近では権力格差自体を無くしてしまう「ホラクラシー組織」が注目されています。
ネットワーク密度の高さとは、組織内において他のメンバーと、アクセスができる度合いのことです。
例えば部下が画期的なアイデアや技術を生み出したとしても、直属の上司が否定的であれば そのアイデアはその時点で見過ごされてしまいます。しかし、ネットワーク密度が高ければ、ネットワーク内の誰かがその可能性に気づき、上司よりもさらに上の権限がある人から認知されることができます。 このようにネットワーク密度が高いと、イノベーションが生まれやすい組織になります。
さらに、部署内だけではなく、部署外や社外に広がるネットワークも注目されています。
近年では、有望なベンチャー企業とコラボするオープンイノベーションや、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)からの投資を通じて、積極的に新しいネットワークを作っている企業も存在します。
若手でも子会社の社長や、取締役に抜擢することで有名なサイバーエージェントでは、ビジネスの実績がなくても、新規事業を任せる文化があります。
狙いとしては、社内から新しい事業を創造することが第一ですが、早めに失敗させて、将来のリーダーを育てることも目的としています。
たとえ事業に失敗しても、経験値を積むことができます。失敗を受け入れるカルチャーがあるからこそ、多くの社員が新規事業に挑戦し、新しいサービスがどんどん生まれています。
最近では、「心理的安全性」が組織の生産性や創造性と因果関係があることも明らかになっています。失敗に寛容なカルチャーを作ることができれば、イノベーションも起きやすくなると言えます。
Googleや3Mは業務時間の20%を自分の好きな仕事に当てて良いというルールが存在します。
この20%ルールから生まれたサービスは、Googleでは「GMail」「Google Map」、3Mでは「ポストイット」などが有名です。
このような遊びの存在は、社員の知的好奇心が刺激され、試行錯誤の場となり 創造的なサービスや製品が生まれやすい土壌となります。
かつて日本では、多くの企業から画期的な製品・サービスを産み出し世界を圧倒していました。一例をあげると、ホンダのスーパーカブ、ソニーのウォークマン、日清のカップラーメンなど多くあります。
しかし、残念ながら、日本は米国や中国に比べると世界でのプレゼンスは確実に落ちています。
その要因の一つが、高度経済成長時に素晴らしく機能していた「新卒一括採用」、「年功序列」、「終身雇用」です。
これらは、管理のしやすさや居心地の良さを優先して、人や組織の創造性を壊していると言えます。
人と組織の関わり方を変えることは、効果が出るまで時間がかかり、すぐに結果を出すことはできないかもしれません。 しかし、競争や変化が激しい時代だからこそ、多くの企業は、イノベーティブな組織に変えていく必要があると感じます。