【ドイツから学ぶ】真の働き方改革とは

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近年、政府が掲げる「働き方改革」が話題となっています。

しかし働き方改革と言っても、何を変えれば良いのか分からない方も多いでしょう。まず、「働き方改革は長時間労働の是正ではない」ということです。

日本は、少子高齢化に伴う急激な人口減少により、労働者の生産性向上が急務の課題です。長時間労働の是正は、改善策の一つです。生産性を向上させるためには、企業、働く人の意識、法律の整備など様々な面で改革が必要になります。

ドイツは日本より生産性が1.5倍高い

ドイツは自動車を中心とする技術大国であり、中国、米国に次ぐ世界第3位の輸出大国です。第4位の日本と比べると輸出額は2倍以上になります。

中国や米国に比べ、人口が少ないドイツが世界第3位の輸出額を誇っている理由は、圧倒的に付加価値の高い商品を世界に提供しているからです。

下記の図は「労働生産性の国際比較2016年版」を参考に作成した、ドイツと日本の比較になります。

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ドイツは日本よりも、年間休日数も多く、年間労働時間が350時間少ないことがわかります。つまり日本人はドイツ人よりも多く働いているにも関わらず、労働により生み出す価値が小さいことがわかります。

ドイツが日本より生産性が高い理由

1. 労働時間に関する制度面

ドイツでは、労働時間貯蓄制度という法律があります。

これは残業時間を貯蓄し、ある程度たまったら有給休暇として取得できる制度です。

この制度の良い点は、残業した分は割増賃金でなく休めるようにすれば、残業代を稼ぐために労働者が長時間労働をするインセンティブをなくす点です。更に、あまり残業代を払いたくないという企業側の本音にも合致します。

また、季節により労働需要の短期的な変動にも、従業員の増減やコストの上昇なしに対応できる自由度の高さが、終身雇用を前提とする製造業に受け入れられています。

2. 休暇を取得する意識の高さ

ドイツでは、年次有給休暇は24日付与されます。企業によっては30日のところもあるそうです。有給取得率も高く、3週間程度のバケーションをとることもできます。

経営者や医師、パン屋なども普通に3週間の休暇を取得し、バケーションを楽しむそうです。

一方日本では、総合旅行サイト「エクスペディア・ジャパン」が実施した、世界30カ国の有給休暇の国際比較調査によると、有給消化率が2年連続で世界最下位であることがわかりました。 日本では、仕事を休んで、周りに迷惑をかけたくないという意識が強いためか、同調査によると有給を取得するのに罪悪感を感じている割合が最も高い結果になっています。  

また、ドイツでは、有給休暇と病気での休暇は分かれているため、病気で有給を取得する必要がありません。

本来、風邪を引いて体調が悪い場合は、しっかりと休むことが重要ですが、日本では、薬でごまかし出社してしまうため、周りの人に移してしまうことに繋がります。これも有給を病欠で使いたくないという意識があるからだと思います。

3. 組織がフラットで、ヒエラルキーが強くない

日本では、役職 = 地位という考え方が強く、上司、部下と呼ぶように明確に上下間の役割が区切られています。

それに比べて、ドイツでは役職 = 役割という認識が強く、マネージャーにしても、CEOにしても役割を与えられていると考えています。 そのため、現場の社員でも対等に物事を主張することができます。

ヒエラルキーが強い組織では、自ら考えて能動的に行動できない、意思の伝達に時間がかかるなどの問題があります。また役職者に権限が集中しているため、上司の顔色を伺う行動をとってしまい、非生産的な労働をしてしまうことがあります。

4. 明確な職務内容と権限委譲

ドイツでは、職務内容が細かく定義されるため、何をやって何をやらないのか明確になっています。

上司が部下に対して、「明日までにこの資料を作っといて」と指示を出しても、部下は「これは、私の職務内容で定義されていない」と拒否することもできます。

また、ドイツでは権限委譲が進んでいるため、自分の裁量の中で、意思決定ができます。日本では、課長⇨部長⇨本部長のように承認を取る必要があります。仕事の中で、報・連・相が徹底されており、何か意思決定をするさいも上司に報告・相談する必要があります。顧客とのメール対応も、上司にccを入れるなど、権限が委譲していないので 常に情報を上司に伝える必要があります。

その結果、担当者の作業量が増えるのと同時に、上司の業務量を増やすことに繋がります。

5. 労働者の自立・独立の意識が強い

ドイツでは、小さい頃から、キャリア教育が徹底しています。10歳で自分の進路を決めなければなりません。

ドイツでは小学校が4年制なため、卒業するまでに3つの進路を決める必要があります。①基幹学校(5年または6年制)から職業訓練コースに進む、②実科学校(6年制)から職業専門学校または上級専門学校に進む、③9年制の中高一貫校で大学入学資格取得後、大学に進学、この3つのコースのいずれかを選びます。

社会に出た後も、必要なスキルは職業訓練などで学び、必要であれば、転職をしながらキャリアをあげていきます。これは、小さいことからキャリア教育を受けているため、主体的にキャリアを築いていく意識が高いからになります。

一方、日本では、 12歳で中学へ入学し、15歳で高校へ進学します。高校を卒業後、就職または専門学校に入学し、大学進学の場合は、自分の偏差値で行けそうな大学を選択し入学。大学4年生になって初めて自分の進路を決めることになります

総合職もしくは一般職として、新卒で入社した後は、自分のキャリアを会社に預け、その後、主体的にキャリアを築く行動ができない傾向にあります。

真の働き方改革を実現するために

ドイツの例からわかるように、生産性をあげるため、残業時間を抑制し、長時間労働を是正すれば良いという問題では無いことがわかります。

働き方改革を実現するためには、国による法律の整備、企業による環境整備、個人の働く意識の変化、この3つを変えていく必要があります。

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