高校や大学へ入学して早々に泊まり込みの課外授業を経験したことはありませんか。
泊まり込みの課外授業は早期に人間関係を形成させることで学生の孤立を防ぎ、チームやクラスの一体感を生み出すことができます。つまり、集団凝集性を高める効果があります。
集団凝集性とは、個人を集団に留まらせるように働く力のことです。
集団凝集性を高めると仲間意識が高くなる、チームの団結力が高まるチームの生産性や効率性が上がると言われています。
凝集性が高いチームは、メンバー同士の情緒的・感情的な絆が強く濃密な人間関係が結ばれるため、ほとんどのメンバーが集団の目標に対して協力的な姿勢をとるようになります。
このように集団凝集性を高めることで、チームのパフォーマンスの向上や離脱者を防ぐことができます。
集団凝集性は対人凝集性と対課題凝集性に分けられます。
対人凝集性とは、好意的な人間関係を育むことで、集団に留まらせる魅力のことです。
対課題凝集性とは、個々の達成したい課題が、この集団に所属することで、達成でき、集団に所属させる魅力のことです。
集団凝集性を高めるためには、対人凝集性と対課題凝集性の両方を高める必要があります。
① 集団の規模が小さい
② 集団に参加するのに一定の壁がある
③ メンバー同士ともに過ごす時間が長い
④ 社内外に仮想敵の存在(ライバル集団の存在)
⑤ 成功体験を持っている
いくつかの質問をメンバーに回答してもらうことで、チーム(組織)の集団凝集性を測ることができます。例えば以下のような質問です。
例1) 職場以外でも、チーム(部署)のメンバーとともに過ごしたい
例2) チーム(部署)の目標達成を常に意識している
例3) チーム(部署)に所属している意識が強い方だ
例4) チーム(部署)では協力してくれる人が多い
例5) 今のチーム(部署)において人間関係が嫌で辞めたいと思ったことがある
これらの質問に対して、「当てはまる」「やや当てはまる」「どちらとも言えない」「あまり当てはまらない」「当てはまらない」などの 5段階で評価してもらい得点を集計することで、チーム(部署)の凝集度を測ることができます。
集団凝集性が高まることは組織にプラスの効果をもたらしますが、マイナスの面もあります。凝集性が高いことで起こるマイナス面は組織内の同調圧力と集団浅慮です。
同調圧力とは、少数派の意見を持つメンバーに対して、暗黙のうちに多数派の意見に従うよう強制させる力のことです。組織の中で、メンバーの和を乱したくない、メンバーから嫌われたくないなどの理由から 反対意見が主張できなく、多数派の意見に従ってしまうことは誰しも経験したことがあると思います。
また、集団浅慮とは集団の圧力により、その集団で考えていることが適切かどうかの判断能力が損なわれてしまうことです。その結果、集団での意思決定が極端な方向に振れやすくなってしまいます。
例えば「ライバル企業のリーダーは無能だから、自社の優位性は揺るがない」と考えたり、「ここに集まっているメンバーは全員優秀だから、 意思決定で誤ることはない」と思い込んでしまうことで、致命的な判断ミスを起こしてしまいます。
日本は島国でほぼ同一民族で構成されており、同質性が高いがために凝集性が高くなりやすいと言えます。
また、企業においては高度経済成長時に確立した、新卒一括採用、終身雇用、年功序列により、集団凝集性が高くなりやすい傾向を持っています。
昨今の名門大企業による不正会計やデータの改ざん問題は、外部の目が届き難い集団凝集性が高い組織に多くみられます。
集団凝集性を高めることは、組織にとって多くのプラス面をもたらします。
しかし、集団凝集性が極端に高いと、多くのマイナス面を生じてしまうことが分かりました。
どの組織も外部環境に合わせて、常に変化していくよう設計して行く必要があります。凝集性に関しても、組織の成長や状況に応じてうまくコントロールすることで、発展していくことができると考えています。