企業カルチャーとは企業に属するメンバーの間で、意識的あるいは無意識的に共有されている価値観や行動規範のことです。
採用においても、カルチャーフィットと呼ばれるように、候補者と企業のカルチャーとの合致度合いにより、入社後の離職やパフォーマンスに影響を与えます。
カルチャーは組織内に所属する従業員が当たり前のことだと考えているため、実体がなく目に見えにくいものです。
企業の理念やビジョン、入社式をはじめとする儀式、創業当時の逸話、組織内でのみ通用する独特な言葉など組織固有の行動パターンを観察することで、カルチャーを把握することができます。
カルチャーを把握するためには、社外のコンサルタントを活用し、上記のような組織固有の行動パターンを把握したり、アセスメントツールを使って可視化することが有効です。
企業のカルチャーは創業者(もしくは創業メンバー)の考え方や理念をもとに形作られ、その後、組織を構成するメンバーの価値観や信念の衝突を繰り返しながら、相互作用を通じて形成されます。
構成員が数名〜数十名の比較的規模が小さい段階でカルチャーが形成され、規模の拡大とともに、カルチャーを共有している構成員との交流などを通して、他の構成員に伝播していきます。
例えば、現代自動車で有名な現代グループの企業カルチャーは、創業者である鄭周永の性格を強く反映しています。
激しく競争心の強い姿勢、規律のある権威主義的な組織カルチャーは創業者の持つ性格と一致していると言われています。
組織のカルチャーの機能をまとめると、以下の5つの機能に集約できます。
1. カルチャーは他の組織と区別する役割を持つ
2. カルチャーは従業員にアイデンティティの感覚を与える
3. カルチャーは従業員の興味を超え、さらに大きなものへの関与を促進する
4. カルチャーは組織の安定性を強化し、組織の結束に貢献する
5. カルチャーは従業員の態度や行動を形成する
世界的に有名なスポーツメーカー「NIKE」の社員の中には、NIKEのロゴのタトゥー(刺青)を入れている人がいるそうです。これもNIKEで働いていることが自己のアイデンティティの感覚を与えている証拠です。
iPhoneやMacで有名なAppleでは、世界的に熱狂的な信者がいることで有名です。彼らは、単純にApple製品の機能やデザインが好きで製品を購入しているのではなく、Appleの価値観や考え方に共感して製品を使っていると言われています。
これも他の組織(企業)に比べてAppleが強いカルチャーにより、競争優位を発揮している結果だと言えます。
優れた企業カルチャーは利益をもたらすことが、多くの研究成果によりり証明されています。
ハーバード・ビジネススクール教授のジェームズ・L・ヘスケットによれば、優れたカルチャーは「凡庸的なカルチャーを持つ競合他社と比べた場合、企業業績の差の20~30%を説明しうる」と言っています。
つまり企業は模倣されにくい優れたカルチャーを持つことで、会社の業績や従業員の採用、離職率など様々な面で競争優位を発揮することができます。
今回は企業カルチャーの定義から、カルチャーの形成要因、カルチャーの機能、優れたカルチャーを持つ重要性を見てきました。
自社のカルチャーを把握し、他社と比べて優れている点、劣っている点を見極めることで、採用から経営戦略まで役立てることができるでしょう。