経営サイドから社員に関わる分析レポートの指示を受けたが、「どこから着手すればよいのか分からない」と言う声を多くの人事担当者から耳にします。
そのような場合、まずはハイパフォーマー分析をすることをおすすめします。理由は比較的簡単な分析手法で優位な結果を把握することができるからです。
社内で「あの人はハイパフォーマーだ」となんとなく分かっていても、どのような資質がパフォーマンスにつながっているのか明らかにしている企業はほとんどありません。
ハイパフォーマー分析をすることで以下のようなメリットがあります。
① 採用時のミスマッチを減らす
② 選考時のコスト削減につながる
③ 社員の育成や研修で活かす
④ 社員の最適配置を実現させる
⑤ 社員の離職率を減らす
ある企業では、社内のハイパフォーマー分析をした結果、入社前に実施するSPIの能力検査と入社後のパフォーマンスに全く関係がなかったことが明らかになりました。
その後、入社前の能力検査を廃止。結果的に採用時のコスト削減にもなり、ハイパフォーマー分析のメリットをすぐに享受できたそうです。
ハイパフォーマー分析をする前に以下のようなデータを集める必要があります。
属性データ:年齢、性別、出身地、学歴(大学院・大学、高校の偏差値)、部署、職種など
行動データ:勤怠データ、1日のスケジュール、顧客との接触回数、会議時間など
評価データ:人事評価、360度評価など
入社時のデータ:選考時のエントリーシート、適性検査(能力検査、性格検査)など
社員の行動データに関しては莫大な量になるため、必要に応じて分析で活用します。また欠損データの扱いについては様々な手法があり説明が長くなるので、今回は割愛させていただきます。
経験年数が長い人ほどスキルが向上するため、パフォーマンスが高くなる傾向があります。そこで経験年数を排除してハイパフォーマかどうか検証する必要があります。
ここで参考になるのが、昇格スピードと直近評価評定のマトリクスです。昇格スピード・直近評価評定のマトリクスでは、横軸に昇格スピード、縦軸に直近の評価を見比べることで ハイパフォーマーかどうか見極めることが可能になります。
※ハイパフォーマーのレベル:ハイ1 > ハイ2 > 普通 > ロー2 > ロー1
(普通以上をハイパフォーマーと定義する)
例えば下記の図のように昇格スピードが社内の平均と比べて早く、直近の評価評定も高い社員の場合は、ハイパフォーマーと定義でできます。
また昇格スピードが社内の平均と比べて遅く、直近の評価評定も低い社員場合は、ローパフォーマーと定義できます。
平均値を比べる(初級)
最も簡単な手法は、ハイパフォーマーとローパフォーマーそれぞれわけ、上記のデータの平均を比較することです。Excelを利用し棒グラフで見える化することで、どの項目に差があるのか直感的に把握できます。
相関係数を出す(初級)
評価データ(パフォーマンス)と入社時のデータ、属性データ(学歴)、行動データなど各項目との相関係数を求めることにより、パフォーマンスとの関係性を把握することができます。
重回帰分析で影響度を調べる(中級)
評価データ(パフォーマンス)を目的変数として、属性データや行動データ、入社時のデータを説明変数と設定し重回帰分析をすることで、どの項目がどの程度パフォーマンスに影響を与えているか明らかにすることができます。
テキストマイニングで関係性を把握する(上級)
社員同士や顧客とのやり取りで使われるメールやチャットの内容をテキストマイニングすることで、社内の人間関係やハイパフォーマーの行動特性を明らかにすることができます。
ただし、テキストマイニングに関しては、解析のため専用のツールを使う必要があり、コストや手間、時間など費用対効果を考えるとなかなか気軽に実施できません。
そこでおすすめするのは、入社時のエントリーシートを形態素解析を使って分析することです。
形態素解析とは、文章を意味のある最小の単位に分解して、意味や品詞など判別することできる解析方法のことです。
ユーザーローカル社が提供している形態素解析は無料で提供しているため、簡単にエントリーシート等を分析することできます。
この形態素解析をすることで、ハイパフォーマーが使っているキーワードや品詞など意外な結果を把握することができるでしょう。
いかがでしょうか。ハイパフォーマー分析をするだけでも多くのメリットがあることがわかります。
上記の分析手法以外にも、因子分析やクラスター分析など様々な分析手法があります。詳しくは下記の記事を参考にしてください。
社内に眠っている人事データを活用し、分析することで、人事業務のみならず、経営に対する提案にも繋がります。まずはハイパフォーマー分析から試して見てください。