インタビュアー&ライター 山田 邦生
士業・管理部門特化の人材紹介会社で営業、キャリアコンサルタントを経験
2016年に株式会社Meta Anchorを設立、代表取締役に就任。
大学生の時に、ベンチャー企業でのインターンに参加したことがきっかけとなり、大学卒業後、ベンチャー企業に就職しました。
新卒で最初に経験したのは、Web求人広告の営業でした。当時は飛び込みやテレアポなどとにかく足で稼ぐ営業がスタンダードで、非常に大変でしたね。
こちらの会社で2年ほど勤務した後、当時取引先であった社員10名ほどのベンチャー企業の社長に誘われ転職し、その会社は急成長して入社から4年ほどで株式上場を経験することができました。
主力事業は、携帯電話のコンテンツ(iモードなど)開発やエンジニアなどの技術者派遣(SES)をしており、私は、SES事業の立ち上げから始まり、最終的には人材紹介事業の立ち上げ責任者を担当しました。
営業やマーケティング、キャリアアドバイザー、事業部長など一通り経験した後、2008年にミクシィに転職し、Find Job! という求人広告事業部の新しいサービスとして人材紹介事業を立ち上げました。
その後、元同僚だった取締役に誘われ、CROOZというネットベンチャーに入社し、最終的には社長特命執行責任者として、中途採用や人員管理、評価、タレントマネジメントなどを担当し、2017年より独立し、DiverWorksという人事コンサルティング会社を創業し、現在に至ります。
仰る通り、当時はソーシャルゲーム全盛期の時代で、とにかくエンジニアの確保が必須で、DeNAさん、グリーさん、サイバーエージェントさんなどの大手ネット企業と戦わなければなりませんでした。
当時は、中途採用や業務委託を含めて毎年120名ほど採用していて、私が退職する2016年までに、会社の規模も90名から600名くらいまでに拡大しました。
今でこそ、リファラル(社員の紹介による採用手法)やアルムナイ(一度退職した社員を再雇用する採用手法)が広がっていますが、当時から元社員をリスト化し、様々なネットワークを通じて、彼らに声をかけ採用していました。
アルムナイやリファラルでは数に限界があるので、求人広告や人材紹介も利用していたのですが、先ほどの大手ネット企業と差別化しないと人材が確保できない状況でしたね。そこで工夫した一つが福利厚生の充実やネーミングによるPRです。
例えば、社長や人事役員と会食しながら1 on 1ができる制度です。今でこそ、1 on 1は多くの企業で行われていますが、会社側がお金を出して、しかも社長や役員と食事をしたりお酒を飲みながら1 on 1ができる環境を整えていたのは、当時では珍しいことだったと思います。 とあるゲームに出てくる酒場のネーミングを利用して「ルイーダの酒場裏」という制度で呼んでました(笑)。
福利厚生って意外と利用率が低い企業が多いと思いますが、ゲーム好きの社員が多かったこともあり、このネーミングは社内でバズりました。1on1となると少し固いイメージですが、キャッチーなネーミングのおかげで、気軽に実施でき、対話できるイメージを想起させることから、利用される機会が多かったです。
制度とは関係なく、人事も社員と1 on 1をしていて、現場の生の情報を細かく収集していました。当時は上司との相性や仕事における不満、希望するキャリア、プライベートのことまで、社員と真正面に向き合っていましたね。
必要に応じて、ケアをしたり、 突然会社に来れなくなった社員の自宅まで足を運び、様子を見にいくこともありました。当時は社員数も500人を超えていましたから、ほとんど毎日、社員とランチをしたり1 on 1をしていましたね。
事業が急成長をしていると、どこの企業もミドルマネジメント不足が問題となります。そうなってからマネジメント研修をするのでは手遅れで、サービス開発が遅れることになります。
スピードが大事なネット企業において、開発の遅れは売上に直接ヒットする原因にもなるので、思い切って人材マネジメントは人事が担い、現場にはクリエイティブなサービス開発だけに集中してもらえる方法を取りました。
同業他社ではあまり聞かない組織体制だったことから、賛否はありましたが、業界の特性、社員の得意・不得意・成長痛の回避という点で、とても効果のあった人事戦略だったと思います。
それにより、現場が最高のパフォーマンスを発揮できる環境を作ることができたと思います。このことも他社との差別化に繋がり、結果的に採用時の強みの一つになりましたね。
私の経験からお話すると、3つあると思います。
1. 経営トップを始めとして、社員一丸となって採用を最優先に取り組んでいる
2. 経歴書の内容だけで判断せず、少しでも可能性がありそうな人と会う努力をしている
3. やるべき採用オペレーションをしっかりと運用、管理できている
この中でも最も重要視しているのは3つ目です。成功している企業は、「やるべきことをやりきっている」このことに尽きると思います。
採用における各種KPIの設定から達成度合いの計測、社員定着・活躍支援、人事評価制度の運用・実行、これらに対して、やるべきことを実行し、できないことは何か洗い出して、PDCAを回す。 当たり前のことですが、できていない企業は本当に多いです。
なぜならば、ベンチャーは事業を立ち上げることへの優先順位が高く、人事への優先順位がどうしても下がってしまうからだと思います。その優先順位を上手くコントロールすることが採用成功につながる一つの意思決定である思います。
はい、西鎌倉CONECTというシェアスペースを運営しています。 コンセプトとしては、「地域活動の拠点として、人が繋がり、新しい発想や企みを形にして、人生を楽しむ」ということで、地域活動やコワーキングなどさまざまな人に利用してもらえる「場づくり」をしています。
鎌倉の魅力は、東京都心から1時間程度で来られる場所にあること、神社や仏閣など歴史遺産が多いこと、海や山の自然に囲まれていることです。
現在、法人向け社員研修のプログラムとして、鎌倉でのワークショップ研修を作っています。非日常である鎌倉という場所で、チームワークを高めるため、様々なアクテビティを混ぜながらチームビルディングができるようなプログラムです。
オフィスビルの会議室の中で、いくら上司と部下が1 on 1をやったとしても、中々お互いの本音や本当の姿は見えて来ないと思うのです。人間の素の姿というのは、海や山などの自然の中にいることで、その人の本質が出てくるのではないかと考えています。
私は最近、「チームワーケーション*1」という言葉を考えているのですが、それは非日常の「空間」、「時間」をチームメンバーで体験する中で、それぞれが内面を振り返り、相手を理解し、チーム力を高めていく新しいチームビルディングの手法になります。
例えば、チームごとにテーマを決めて鎌倉を探索したり、謎解きを行うなども考えています。アクテビティを体験する中で、お互いの価値観や特性を理解し、チームワークを高めることが狙いです。
また、定性的なものだけではなく、あらかじめINOBERのような定量的に測れるツールを使って、チームの特徴やメンバーの特性を把握し、アクテビティとセットで行うワークショップも考えています。
卓球台は購入したのではなく、地域の方が寄付してくれました。西鎌倉CONECTではいつでも卓球できます (笑)
*1 ワーケーションとは、「Work」と「Vacation」を組み合わせた造語で、休暇中に旅先などで仕事をする新しい働き方で、働き方改革を推進する企業を中心に広まりつつあります。
社名 | 株式会社DiverWorks |
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事業内容 | 人事コンサルティング事業 人材紹介支援 シェアオフィスの運営 |
URL | https://diverworks.co.jp/ |
代表略歴 | 新卒から一貫してIT×人材の軸でキャリアを構築。求人広告の営業から、人材派遣・業務委託・人材紹介などの人材事業を経験。20代はスタートアップベンチャーの事業幹部として株式上場に携わる。 ミクシィでは人材紹介事業の立ち上げ責任者として担当。その後、株式会社CROOZにて中途採用の責任者として人事業務全般に携わる。2017年に株式会社Diver works設立。 |